ー苦しみに耐えかねて入院を決意するまで。ー
時は3月に差し掛かかろうとしていた。
例の「怪しい薬」による処置を中断し、ステロイドの含有されていない軟膏で排便時に脱出した痔核を押し戻す日々を送っていた。
だが、これを延々と続けても脱出し続ける痔核が小さくなることはおろか完治する事はない。
食欲も意欲も徐々になくなり、便が細く少量しか出ない日々が続いた。
便秘が続くと激しい腹痛と下痢でリセットされるような感覚だ。
ネットで症状を調べる日々…これがいけなかった。
大腸・肛門(直腸)がん、潰瘍性大腸炎、と怖い病気の名前がずらりと並ぶ。
それを見るたび精神が削り取られていく。
就寝中に腹痛に襲われたり、出ない便のために何度もトイレに起きる毎日が続き食生活も乏しくなった。
ゲリラやSF映画のシナリオに登場する配給食のように決まったものしか食べなくなった。
朝はパックご飯にインスタント味噌汁と納豆。
昼は職場では食堂があるので比較的ボリュームのあるものを口にできた。
出されれば食べれる。受け付けないわけではないので自分でもおかしいと思わなかった。
夕食は途端に乏しく朝のメニューに洗わずに食べれるサラダとレトルトのきんぴらごぼう、もしくはひじきの煮物が追加されるだけ。
そしてたまにパックご飯がオートミール(パスタソースやスープの素で味付けしたもの)になるだけであった。
食事をとるのが楽しくなくなっていった。
ステーキ、ラーメン、インスタント食品、揚げ物、こってりした惣菜。
今まで何の不安もなく食べれていたものを食べるのが怖くなり自ら避けるようになってしまっていた。
食べる苦しみと出す苦しみに耐えかね、3月初旬が過ぎるころになってようやく手術を受けようと決意したのだった。
なるべく失敗しない為の病院の決め方
手術を受ける病院は自分で探した。
今住んでいるエリアから公共交通機関で通える事はもちろん、手術を受け退院したら一人で療養する自信がない事も視野に入れ実家からも通院できる距離も考慮した。
そして何より重要なのが「大腸・肛門専門病院」かつ「手術実績が豊富で専門医・指導医が在籍している」ことだ。
この点は病院をネットで調べていて神経をすり減らしていく中で得た有益な情報だ。
調べるのに使ったのは痔を100%専門とする医師の為の学会である「日本臨床肛門病学会」によって開設された専門医・専門病院の検索サイト「痔を専門とする医師を探そう」だ。
このサイトに登録されている医師は「日本大腸肛門病学会」の専門医登録制度を経て「日本臨床肛門病学会」によって技能認定・指導医認定を受けている。
街中を歩いていると見かける病院の看板に表記されている「肛門外科」「大腸・肛門外科」は標榜する際に専門性は必要なく外科医などが「ついでに」掲げているものが多く、あまり信用しない方がいい。
もちろん手術だけでなく診察・治療においても専門医や専門病院で受ける方が安心である事は間違いはないので治療や手術に悩んでいる人は是非このサイトを参考にしてほしい。
自分が今住んでいる場所からのアクセスなどの立地条件に合っているかも重要な選定基準の一つなので忘れないように。
痔に限らず、高度な手術や治療を受けるとなったらまずは専門病院を探すのが良いだろう。
今回は痔の他にも器質的疾患(大腸がん・潰瘍性大腸炎)による排便異常を否定する為の大腸内視鏡検査を受けるつもりであったため、内視鏡検査の実績や手法だけでなく内視鏡医が多く勤務している病院である事も考えた。
そういう時は候補の専門病院の内視鏡実績や腕の確かな医師が在籍・勤務しているかどうか病院のHP等で入念に調べよう。
そして自分は住んでいる場所と実家からのアクセスが比較的良く技能認定医や指導医が多く在籍し、手術実績だけでなく内視鏡検査実績も豊富な千葉県にある「辻中病院柏の葉」で入院・手術を受ける事に決めたのだった。
痔の手術は強制はされない
病院を決めたので初診に必要な問診票を持参し、3月中旬に「辻中病院柏の葉」へ行き診察を受けた。
JR常磐線で柏駅まで行けば定期的に病院までの送迎の車が出ているので最寄り駅であるつくばエクスプレス線「柏の葉キャンパス駅」まで行く必要がない。
入院や手術後退院した後の通院等も考慮すると自家用車での通院は難しくなるのでここは譲れないポイントだ。
「辻中病院柏の葉」での初診診察はおなじみの直腸診と肛門鏡診察だ。
比較的大柄な男性医師で自分のよりも太い指が肛門に挿入される。
だが既に何度も痔核を肛門内に押し戻す過程とドクターショッピングによる度重なる直腸診察で慣れたものだ。
診察が終わり、男性医師からの診察結果は「手術適応相当の内痔核脱肛」だったが、肛門内に押し戻す際に何ヶ所戻している感覚があるかという質問をされた。
その時は精神的に参っていたので「およそ3つくらい」と曖昧な回答をした。
男性医師によると内痔核の1つが結構大きく、他の痔核部分や肛門自体を塞ぐように肥大化している事を伝えられた。
そしてここまで肥大化が進むと薬による保存療法では改善しないこと、手術にはジオン注射による硬化療法と結紮切除術による外科療法があるが注射療法での完治は難しいこと、再発率まで考慮すると結紮切除術による外科療法は痛みのデメリットに対して根治性のメリットが高いことを説明された。
これはわかりきっている事だった。
こちとら「例の怪しい薬」にまで手を出したのだ、それで治るかも…と思っていたのは自分でも愚かだと思うが。
ちなみに痔は良性疾患なので医師から手術を強制される事は殆どない。
基本的に大量出血して失神するような重症か、直腸がんなどといった器質的疾患が否定しきれない場合を除けば「患者が手術を希望する」場合にのみ手術診断を適応するようだ。
自分はやはり排便後に痔核を押し戻し続ける事に耐えかねていたので入院し、手術を受ける事を決意した。
入院の準備と勤務先への説明
初診を終え、その日のうちに入院の手続きと入院前検査を行う。
入院の手続きはベッドの空き状況などによって多少前後する事は考えておいた方がいい。
自分は4月6日より入院となり、4月7日に大腸内視鏡検査を受け器質的疾患および所見がない事を確認して4月8日に手術という流れになった。
手続きを終えたら、入院前検査に進み「血液検査」「胸部レントゲン」「心電図」を行う。
一通りの検査を終え、検査結果に異常が見つかれば入院前に連絡がある旨を伝えられてその日は終了。
軟膏などの薬を処方されたので薬局でこれらを受け取り、帰路についた。
勤務先には病院での会計待ちの間に事情を説明し、4月1日よりGW明けまで溜まりに溜まっていた有給休暇を利用し療養する事を説明した。
後日不在中の業務引継ぎ、予後によりリモートでの業務が可能かどうかを話し合い、3月31日まで出勤した。
退院後の生活に必要なものを準備しておく
自宅についてからはAmazonで退院後の生活に必要なものを準備しようと考え、色々買いあさった。
色々な「痔の手術の体験ブログ」を読み込んでいると術後の患部のケアには「生理用ナプキン」が有用であるようだ。
しかし自分は男性で普段からそういったものと縁がない。
ドラッグストアの生理用品コーナーでウロウロするのもアレなので生理用品にどういった特徴があるのかをメーカーのページで勉強しながら、適切なものを探した。
トイレにそのまま流せて処分に困らない、小型で携帯しやすい、ある程度の吸収力があって夜中に交換しなくていい等々…ポイントを絞り込んで見つけたのがこちら。
入院前に準備しておこう
ユニ・チャーム社の生理用品ブランド「ソフィ」の「シンクロフィット」だ。
生理用ナプキンに吸収力を追加する為のいわゆるアタッチメント扱いの商品だが、お尻に挟むように当てて使用するので術後の患部のケアにはピッタリだ。
ガーゼではズレて肌着を汚してしまう恐れがあるが、これなら余程激しく動かなければズレる心配はない。
また、小型で何枚も携帯しやすく外袋も本体もそのままトイレに流して処分できるため交換の手間も大幅に削減できる。
Amazonなら大容量タイプも手に入る為、コスト的にも安心して注文できる。
自宅トイレに常備しよう
また術後の患部は清潔を保っておく必要がある為、患部が痛くてウォシュレットによる洗浄が困難な時の為に「トイレに流せるおしりふき」も注文した。
こういったものはいざ退院してからは意外と頼めない(特に受け取ったり運んだりといった行動が難しくなる)ものなので余裕のあるうちに準備するのが賢明だ。
安心感を買う感覚で事前に準備し、結果的に余ってしまったりしてもネガティブに考えない事だ。
他にも入院前に色々と買い込んだが、それは次回に紹介しようと思う。